【RJ01678447】甘イキドライオーガズム ~ ノイズに躾けられる悦び ~

作品内容

最近、普通のオナニーでは、少し物足りなくなっていました。

だからといって、困っているわけではありません。

イクことはできるから。

けれど、他者から、そして自らの働きかけで絶頂を知り、

向上心まで植え付けられたそこが、なにかに溺れ、足掻いている。

もっと強い刺激が欲しい、というのも、やっぱり違います。

痛いことがしたいわけでも、

激しく責められたいわけでもない。

ただ、身体のどこを触られているのかもわからないまま、

頭の奥から、じわじわ甘くなって、

もうイク、という瞬間だけではなく、

イクまでの時間も、イッたあとの身体も、

ぜんぶ気持ちよくなってしまうような、

そんな、知らないイキ方が、

どこかにあるような気がしていました。

「イクって、”これ”以外にもあるの?」

思い返してみても、到達する先は一つかもしれない。

でも、絶頂の膨らみは、ルート次第で、

さらに大きくなるのでは……?

それは、たっぷり焦らされたあとの期待に近い、

もしかしたら単純なものかもしれませんが、

ほかのイキ方をもっと知りたくなって、

誰にも見つからない名前で、裏アカを作りました。

SNSに流れてくるのは、

脳イキした、何度もイッた、触らずにイッたという、

本当なのか嘘なのかわからない話ばかり。

それでも、夜になると、勤勉なそこに指先を添えながら、眺めてしまいます。

ドライオーガズム。

脳イキ。

メスイキ。

エナジーオーガズム。

呼吸法。

瞑想。

骨盤底筋。

バイノーラルビート。

画面には、見慣れない言葉と動画が、次々に表示されます。

力を抜いてください。

呼吸に集中してください。

射精を我慢してください。

身体の内側を意識してください。

言葉だけでそう片付けられてはいるものの、

そんなにいろいろ考えながら、

果たして本当に気持ちよくなれるのかな。

そこまで頑張らなければ、いけないんだろうか。

もう、寝落ちするまで適当な動画でも見よう。

そう思って動画サイトを開くと、

おすすめ欄に、一枚のジャケットが表示されました。

『甘イキドライオーガズム ~ノイズに躾けられる悦び~』

なにそれ、と思いながらタップすると、

トラック名が、ずらりと並んでいました。

【実験パターン27】

【実験パターン48】

【実験パターン65】

【実験パターン40】

【実験パターンδ】

……実験?

でも、呼吸のこと。力の抜き方。我慢のコツ。

この音源は、なにも教えてくれない。

上から順番に聴くこと。

できるのは、それだけ。

現実逃避の先がオナニーで、

私はいま、そこでも行き詰まっているのかもしれない。

オナニーまで、頑張りたくない。

イキ方にまでくよくよしてしまう私でも、

これなら、すぐに、できそう。

5秒待つ広告をスキップして最初に流れてきたのは、

車が遠くを走っているような、低い振動でした。

声は聞こえません。

「触って」とも、

「我慢して」とも、

「イっていいよ」とも言われません。

低い振動の上で、落ち着かない音が揺れています。

私は無意識に、脚を閉じていました。

まだ、触っていない。

それなのに、

いちばん敏感な場所へ、音を当てられているみたいでした。

苦しい開発でも、

厳しい我慢でもない。

ただ、鼓膜の奥から、

身体が赦されていく。

音が引くと、身体のほうが、続きを待っています。

もう一度。

さっきの音、もう一度来て……。

その願いに気づいた瞬間、

「わっ……!」

明るい声と、大きな音が耳に飛び込みました。

「〇〇市にお住まいの方にお聞きします!!」

脱毛の広告でした。

身体の内側まで沈みかけていた音が消えて、

VIO脱毛を勧める声が流れています。

「……いま、だったのに」

何が「いま」だったのか?

もうイキそうだったわけではありません。

でも、身体がようやく、

いつものオナニーとは違う場所へ向かい始めていたのに。

広告を飛ばして続きを再生しても、

身体は警戒しています。

また、途切れるかもしれない。

次の動画へ飛ばされるかもしれない。

せっかく音に預けかけた身体が、

画面の中へ引き戻されてしまう……。

調べてみると、この音源は、まるごと手に入るようでした。

広告も、次の動画もない、私だけの実験室。

実験の途中で、邪魔をされたくない。

最初のパターンから、最後の波まで。

環境に邪魔されずに、

音にくまなく舐め回されてみたい。

普通のオナニーなら、

もう何度もしてきました。

触ればどうなるのか、

どのくらいでイクのか、

終わったあと、どんな気持ちになるのかも知っています。

だから今夜は、

いつものように、急いでイかなくてもいい。

音源を手元に置いて、

最初から、順番に。

どこで何度イッてしまっても、

音は待ってくれずに、

次のパターンが、始まってしまう。

普通にイクだけじゃ、もう足りない。

どの番号で身体が変になってしまうのか、

自分がいまどこにいるのか、知りたい。

私は、性的意欲の尽きない、実験体です。

このノイズに躾けられたら、

今夜こそ、”完璧”が見えてしまう気がするのです。